2011/07/11

ジャニーズの戦略



















今日のニュースの中に、下記のような記事があった。本日はこの記事について考えてみたい

観光回復へPRビデオ=アイドル「嵐」が出演-外務省など
 外務省と観光庁は東日本大震災から丸4カ月となった11日、震災で激減した外国人観光客を再び呼び込もうと、PRビデオ「メッセージ・フロム・ジャパン」を発表した。アイドルグループ「嵐」のメンバーが全国の観光地を訪れ、地元の人々とともに招き猫のポーズをまねながら、「皆さんが日本に来て楽しんでくれることが日本のあしたの力になる」と訴える内容だ。
 松本剛明外相は都内で記者会見し、「ぜひ日本の元気な姿、変わらぬ美しい姿を世界に伝えたい」と強調。嵐のリーダーである大野智さんは「(招き猫のポーズが)世界中ではやったら最高だ」と語った。フィルムはニューヨークの繁華街タイムズスクエアの大型スクリーンをはじめ、100以上の国・地域で放映される。(2011/07/11-15:41)時事通信社 


このニュースには、かなり落胆させられた。まず、最初に納得が行かなかったことが、なぜ嵐が出演するかということだ。確かに嵐は今や日本を代表するトップアイドルであることは間違いない事実である。ただ、果たして「震災で激減した外国人観光客を呼び込む」ための人選が嵐なのは適任であろうか。近年ジャニーズはアジアでも人気があるのは間違いない。だからといって嵐でよいのだろうか。どうしてもこの点について納得がいかなかったため、観光庁のウェブサイトを見てみたところ、今回のPRビデオを作るに当たったコンセプトと、嵐が選ばれた背景が次のように記載されていた。

<コンセプト>
「外国人観光客の皆様に、ぜひ日本に遊びに来てほしい」という日本人ひとりひとりの気持ちを伝えるために、「嵐」の皆さんが日本各地の観光地に赴き、訪日観光の多様な魅力を紹介します。
人を招く幸運の象徴として、「招き猫」をモチーフに使用し、日本各地の皆さんと「招き猫」のポーズで「日本中のひとりひとりがあなたをお待ちしています」というメッセージを伝えます。

<観光立国ナビゲーターとは>
観光庁は、訪日観光の“日本の顔”としてふさわしいイメージリーダーを「観光立国ナビゲーター」として起用することを決定、2010年4月に「嵐」の皆さんにご就任頂きました。ご就任以来、最重点地域である東アジア諸国・地域でのTV-CM、新聞・雑誌・屋外広告等海外プロモーションにボランティアでご協力を頂いています。


コンセプト自体がまったく意味がよくわからないが、百歩譲ってコンセプトが納得できたところで、嵐の起用に関しては全く納得できない。どうして嵐が、訪日観光の日本の顔となるのであろうか?確かに日本人の感覚からしたら、嵐は国民的アイドルであり「日本の顔としてもふさわしい」人材かもしれない。一方、世界から見たらどうであろうか。前述のアジアの若者の心はつかめるかもしれないが、一般的な外国人にとってはまったく知らない5人の若者である。ビデオの内容を見ていないので断定はできないが、いくら訴えかけたとしても、心に響くものになるのだろうか。なるとしても、それは嵐というアイドルグループの力なのだろうか。

本当に著名人を使ったPRを行うのであれば、嵐という人選は間違っている。選ぶのであれば世界でも有名な日本人、例えばオノ・ヨーコだったり、今ならサッカーの長友選手だったり、そういう人選をすべきだ。それでも日本人の口から日本は安全だというのに説得力が欠けるという指摘があるはずである。そのため、世界的にも有名で且つ親日的なセレブレティ、例えば先日来日をしていたレディーガガ氏に全面的な協力を依頼すべきだったのではないか。

イメージキャラクターとして嵐は2010年より活動をしているらしいが、上記観光庁曰く”最重点地域である東アジア諸国・地域でのTV-CM、新聞・雑誌・屋外広告等海外プロモーションにボランティアでご協力を頂いています”ということである。つまり無料で出演している。ある調査によると嵐は日本一CM契約料が高いらしい(15000万円)。「あの嵐が無料で出演してくれる」ということだけで観光庁が採用を決めたようにしか感じられない。

では、なぜ15000万円の出演料をタダにしてまで、ジャニーズは嵐の出演を認めているのだろうか。日本復興のためというのが最もな理屈だが、その裏には緻密な戦略が隠されているように感じる。上記観光庁のサイトには、今回のPRビデオは下記概要でオンエアされるとのことだ。

■メッセージ・フィルム「Message from Japan」放映概要
・放映開始:2011年7月11日(月) 午前10:30~(日本時間)
・映像タイプ:[1]4分 [2]90秒 [3]60秒 3パターン
・言語タイプ:英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語
<今後の上映予定>
・世界各国の在外公館(大使館、総領事館)で7月中旬以降順次上映予定
・世界各国・地域の空港構内モニター、ビジョンで8月以降順次上映予定 
・日本乗り入れの航空会社の国際線機内モニターにて、8月以降順次上映予定
・日本政府観光局(JNTO)Visit Japanホームページ上で8月以降順次公開予定


空港や旅客機内で放送される、しかも東南アジアを中心に100各国以上である。これはおそらく莫大な媒体費がかかっていることは間違いない。ということは、嵐は世界中の様々な場所に露出されることになる。つまり、ジャニーズにとっては出演費はタダであったとしても、無料で現在最も勢いのある嵐というグループを世界戦略の拠点となる東南アジアを中心に、世界中にアピールすることができるのである。


このように、ジャニーズにとっては非常に「おいしい」話であり、ボランティアという名目で目先の出演料をタダにしてまで嵐という最大の稼ぎ頭を提供する価値は十分にあるはずだ。そういう意味ではジャニーズのマネージメントは非常に優秀である。

一方で観光庁側はどうなのだろうか。観光庁といえば我々の税金を使い諸外国に日本をアピールする、言えば日本国という商品の宣伝/PR部門である。そのような組織が目的の最大化を図ることができる施策とは言い難い人選を行い、自己満足に近いようなPRビデオを作ろうとしている。本当に酷いお役所仕事としか言いようがない。このような組織にこそ、第一線で広告やマーケティングに携わってきた人材が職務に就くべきである。

0 件のコメント:

コメントを投稿