2011/05/20

Linkedinは日本で成功するか? (Part.2)




◆日本市場で成功するための課題・障壁

Linkedinが日本で成功するためには、クリアしなければならない
いくつかの課題・障壁があると思われる。



1. 守秘義務/情報漏洩

このところTwitterやSNS上での、いわゆる「炎上」を頻繁に目にする。
ことそれが個人の炎上の範囲で鎮火出来ればまだしも、
従業員による企業を巻き込んだ炎上も増えているように思う。

特にTwitterは気軽に書き込めるためか、
ついつい愚痴のような「つぶやき」が出てしまうのだろう。


Linkedinの日本上陸は、この炎上劇がさらに加速する恐れがあると思われる。

企業名を出した個人による何らかの発言や書き込みで、
企業価値が著しく低下させられたり、
機密情報が競合他社に漏れたりと
リスクを含む情報漏洩の可能性があるのではないだろうか。

どのような情報がNGで、どこまでの情報がOKなのかは
個々人の企業との契約内容によっても異なってくるだろうし、
企業の法務の見解によっても違ってくるため一概には言えないだろう。
ただし、余計なリスクを嫌う日本企業においては、
内部統制・リスクマネジメント的観点から
Linkedin使用禁止を全社員に言い渡す、というような事態も考えられる。


この点をGoogleで検索してみたが、
現状、本国アメリカでも上記のような懸念点は見受けられなかった。
おそらく企業側がきっちりと「ソーシャルメディアポリシー」を設定しているからだろう。
ITmediaのブログによれば、日本の設定率は25%で世界でも平均値だそうだ。
日本進出で成功するには、会員数を増やすということも重要だが、
クライアントとなりうる企業側を味方につけなければビジネスは成立しない。
Linkedinが日本企業が安心できるコンプライアンスに力を入れなければ、
急成長したとしてもGrouponのように問題が多発する可能性がある。




2.非グローバルな日本市場

ソーシャルネットワークとは、
ネットワーク外部性が働くサービスである。
会員が増えなければ利用者にとってメリットが少ない。

例えばソフトバンクは午後9時までソフトバンク同士は通話料無料であるが、
もし周りにソフトバンクを使っている知人が1人もいなければ意味がない。
逆にいまドコモを使っているが、周りはソフトバンクユーザーが多ければ多いほど
乗り換えるメリットは高くなる。

1つのグローバルプラットフォームにおいて
利益を享受出来るサービスとしてFacebookがある。
Facebookがmixiより優れている点は、
世界中にいる7億人とつながれるということだ。
日本語だけ使って、日本人とのみ友達であるならば、
おそらくFacebookを使う意味はあまりない。
mixiでもFacebookと同じような機能を使うことができるので、
mixiで実名登録して使っていれば使う意味はあまりないのではないだろうか。
現状のLinkedinを使うメリットとはまさにこれである。

ビジネスの世界で最も大切なのはネットワークだと言われている。
プロフェッショナルネットワークであるが故に、
Linkedinの会員になれば、
世界中のグローバル企業や人材とつながることができ、
母国以外の土地であっても、よりよい条件の仕事を手に出来る可能性があるのだから。

ただし、そのプロフェッショナルネットワークにおいて
共通言語は英語である。
英語を使いこなせる人であれば、
外資系の求人や海外からのオファーだって手にするだろう。
しかし、英語を得意としない人であれば、
現状のLinkedinのメリットはほとんど感じないだろう。

企業側にとっても同様のことがいえる。
いまはビジネスは限りなくボーダレスになっている。
大企業のように今後より一層のグローバル展開が必であり、
そのような人材を手軽に素早く獲得したいのであれば、
Linkedinは非常に魅力的なサービスであると思われる。
一方で、その他日本企業にとって現状のLinkedinは
魅力を感じられないだろう。


前置きが長くなったが、日本進出のための障壁としては、
英語の得意でなく、現状のLinkedinの恩恵を受けられない
潜在ユーザーとをどう取り込んでいくかだ。
1つの方法としては、
ユーザーにとって有益となるようにネットワークの規模を広げる
つまりLinkedinで採用活動を行う日本企業を少しでも増やすことである。


日本にはLinkedinと似たようなサービスで
enJapanの「スカウト」制度があるが、
これは、求職者と人材コンサルティング会社とのマッチングである。

Linkedinでは、求職者と企業がダイレクトにやり取りできるため、
企業側がうまく使いこなせば中抜きして直接求職者にコンタクトすることが出来る。
このコストリダクションを一つの切り口として
企業側にLinkedinでの採用活動に切り替えてもらう。

こうして、日本語ユーザーにとって魅力的な企業が増えることが
日本での展開には必須だと思われる。




なお、実名制が問題となるのではないかという人もいるようだが、
日本でもFacebookが徐々にユーザー数を増やしていることもあり、
実名制は浸透しつつある。
また、Linkedinの場合はFacebookと異なり目的が明確で、
条件の良い仕事が手に入る可能性があるという利益もあるため、
躊躇しているユーザーの背中を押すだけのパワーは持っているのではないだろうか。










◆まとめ
英語に苦手意識のある日本市場において展開するには、
日本企業を1社でも多く巻き込んで、
ユーザーベネフィットを高めることが最重要課題である。
そうでなければ、収益化もほど遠い。

会員数に関しては、当面の目標はキャズムを超えることである。
個人的な肌感覚では、100万人前後がキャズムになり、
この人数を達成できれば、広告収入に安定してくるのではないだろうか。



つまり、

情報漏洩のリスクをクリアして日本企業(採用担当者)を味方につけること


これが出来れば、Linkedinは成功するはずだ。



ただし、現状のままのLinkedinのサービスのメリットを享受できる人が少ないということは、
グローバルに戦える人材が日本に少ないということを意味する。
世界の他の国々と同様に、現状のLinkedinのサービスを十分に活用出来る
どこでも戦える競争力を1人ひとりが持っていなければ、
国際社会に置いて今後日本は完全に置き去りにされる気がしてならない

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