2011/08/26

日本発のLCC企業が成功するためには




















  JALも格安航空に参入 大西社長「共食いは極小化できる」


ここにきて、日本でLCC(ローコストキャリア/格安航空会社)のニュースをよく目にする。
全日空は元ライアンエアーの会長を迎えて関西空港をベースとした「Peach Aviation」を来年3月から開始。同時にアジア最大の格安航空会社エアアジアと共に成田空港を拠点とする「エアアジアジャパン」を設立すると今年7月に発表した。一方日本航空もオーストラリアのカンタス航空の子会社ジェットスターとLCC会社を作ると発表している。
LCCのメカニズムや特徴に関してはgoogleで検索すれば関連するページはたくさん出てくるのでここでは割愛したい。今回取り上げたいのは、なぜ急にLCCが話題になり参入のニュースが出てきたのか、そして日本の航空会社によるLCCが成功するために(マーケティング的観点から)何が必要なのかを考えてみたい。




◆なぜ今LCCなのか
下記ランキングは、国際航空運輸協会による年間定期便旅客数の順位である(Wikipediaから流用)。あくまでも目安としてだが、この図から航空会社の規模を見てとることができるだろう。このトップ10のうち、2位のサウスウエスト航空、5位のライアンエアーは格安航空会社(LCC)として知られている。


Rank
航空会社
定期便旅客数 (単位:千人)
航空連合
1
 デルタ航空
111,159
スカイチーム
2
 サウスウエスト航空
106,228
 
3
 アメリカン航空
86,129
ワンワールド
4
 中国南方航空
76,078
スカイチーム
5
 ライアンエアー
71,229
 
6
 ルフトハンザ・ドイツ航空
56,693
スターアライアンス
7
 ユナイテッド航空
54,015
スターアライアンス
8
 USエアウェイズ
51,814
スターアライアンス
9
 中国東方航空
50,336
スカイチーム
10
 エールフランス
47,029
スカイチーム



サウスウエスト航空はLCCの基礎をつくったアメリカの会社であり、1970年代から格安航空会社として知られている。その徹底したコストカットと効率化はビジネススクールのベストケーススタディとしても広く知られており、アメリカにおける最優良航空会社と呼ばれることも多い。一方ライアンエアーはアイルランド発の欧州最大のLCCである。こちらも歴史が古く1985年から運行を開始。その安さから度々安全性が指摘されることもある。旅客機内を媒体スペースと見なし広告枠を販売したり、将来的には立ち乗りサービスを開始すると発表するなど、画期的な会社であることでも知られている。

日本では最近になり耳にする言葉であるが、世界的に見ればずいぶん前から存在しているのだ。先進国の中で日本は圧倒的なLCC後発国である。ではなぜ今になって日本ではLCCが話題になっているのであろうか?筆者自身、随分前にLCCを海外で利用して以来、なぜ日本にはないのだろうかと疑問に思ってきた。そしてこのタイミングで全日空とJALが参入してきたのは何故なのだろうか。

そもそも日本の航空業界は国土交通省によって牛耳られていた。そのため、規制という名の参入障壁が設けられていたため、日本において自由に航空会社を作ることはできなかった。国土交通省の言い分としては「安全性の担保」という名目があっての参入障壁であったと思われるが、そもそも日本の空は寡占状態が続いており、規制が緩和されたのがわずか十数年前の出来事だ。その規制緩和をチャンスに生まれたのが「スカイマークエアラインズ」や「エア・ドゥ」といった国内版LCCである。普通運賃の3~5割引を目玉にして損益分岐点である搭乗率80%をクリア、順調にビジネスを拡大していくかと思われたが、ANAやJALが価格で追随してきたため、経営は悪化していった。そのため、日本人には馴染みがないLCCだが、実は十数年前からあったのだ。ただ、規制緩和をしておきながら、結果的に出る杭として潰された形になってしまったとは、いかにも日本らしいと思う。

それでは国際線はどうなのかというと、これに関しても規制のがんじがらめのようである。とあるレポートによると、そもそも国際航空運賃とは
二国間協定によって決定され、その運賃は独占禁止法の適用除外の特例が世界的に認められ、わが国では航空法第110条でカルテルとはならない旨定められている。(中略)国土交通省は2007年9月21日、日本発の国際航空運賃の事実上の下限を設定している現行規制を撤廃し、2008年4月から原則自由化する方針を発表した。ただし、認可制度は存続し、特に合理的な理由や、極端な設定でない限り自動的に認可する。
ということだ。独占禁止法の特例という扱いにもビックリしたが、やはり自由経済の下にこの規制は緩和されたのであろう。ここ最近、エアアジアや中国春秋航空のようなアジアのLCCが日本に参入してきたのはこのような背景のためである。
ただ、旅行代理店に務めている方のブログによると、
2010年春に茨城空港が開港、その年の秋には羽田空港に4本目の滑走路が完成した。成田空港も一段と発着枠を広げる計画だ。混雑していた首都圏の空港に余裕が生まれ、LCCなどの新規参入組を受け入れる余地が生まれた。関西国際空港はもともとガラガラで、新規の航空会社は着陸料を1年間タダにするなど割引サ-ビスを展開中だ。あきらかに日本空港の発着枠や高い着陸料といった参入障壁が低くなっている。とは言え、実際に日本でLCCが育たなかった本当の理由は日本の航空行政に問題があった。過去10年の日本の航空行政は、経営が不安定だった日本航空をどう守るかが隠れたテ-マだった。しかし、日航の法的整理で日航への配慮がなくなり、環境は一変してしまった。
というような業界裏話もあるようである。
JALの経営破綻、規制緩和による海外LCCの参入により、日本の航空業界を独占してきたANAも、そして新生JALもLCCという選択肢を取らざるを得なかったのであろう。




◆日系LCC成功のために①:ポジショニング


既存の航空会社(レガシーキャリア)がLCCを設立する例は過去にもあった。ただし、利益をしっかりと生み成功と呼べるのは、カンタス航空とジェットスターの例だけだそうだ。
ジェットスター社長のインタビュー記事によると、
たいていの会社は、航空機は塗装だけを変えてLCCにして、乗務員も親会社から出向という形をとったり、販売にしても、元々レガシーキャリアが使っていた予約端末を使い回ししたりする。発券方法も親会社と同様のやり方をしていると思います。変わるのはブランドと、多少の人件費。これでは、大してコストは下がりません。例えば、カンタスだとラウンジが利用できたり、マイルがたまったりします。出張の際は、運賃は会社が負担しますし、頻繁に便が飛んでいる方が便利。航空券の変更がきくといった柔軟性も必要です。その部分はカンタス。ところが、土日になって、家族4〜5人で旅行に行こうとなった時には、多少朝早かったり夜遅くても、安ければ選択していただけることが多い。そういう住み分けができています。 さらに、路線が競合しないようにしています。例えば、今までカンタスが運航していたビジネス需要が少ない「レジャー路線」と呼ばれる路線や、カンタスで利益が上がらない路線をジェットスターに移管しています。当然コストが下がりますので、路線の収支が改善します。できるだけ2つの航空会社が重複しない工夫をしています。

そのため、JALがカンタス航空と手を組むというのは、実に正しい選択である。成功のためには、レガシーとLCCの2社間において、カンタス-ジェットスターのようなフレキシブルな連携が必要不可欠であろう。しかしこのようなことは、日本的な大企業が最も苦手としている分野のような気がする。何はともあれこのプロダクトポジショニングをまずはしっかりと定めることが、成功には不可欠であると思われる。




◆日系LCC成功のために②:ブランド戦略


ANAもJALのLCCも、恐らく海外路線の場合、既存の海外LCC会社と価格競争で勝利するのは厳しいような気がする。というのも、例えばマレーシアを本拠地としているエアアジアと同一路線で運行する場合、日系LCCの場合コスト面(特に人件費)では太刀打ち出来まい。よって、ある程度価格競争力はありつつも付加価値によってその差分をカバーしなくてはならないだろう。ただし、付加価値といっても余分なものを排除した結果誕生したのがLCCであるため、余計なサービスを付加することで価値をあげるのは本末転倒である。

そこで重要になってくるのは、ブランド戦略なのかと思う。価格優位性のある諸外国のLCCの弱点は、安さの分だけ安全性が担保されているのか、という消費者インサイトがある点ではなかろうか。それが発展途上国のLCCであれば、そのような気持ちが強まる可能性がある。それに対して日系LCCは価格では勝てない分、安全性や信頼性を基盤としたブランディングをすることで、充分に太刀打ちできるのではないだろうか。安かろう悪かろうというイメージを払拭させブランドとして確立したユニクロのような存在を目指すべきだろう。
もう1つ、ブランディングとは直接関係ないかもしれないが、日系LCCの場合親会社の持つマイレージサービスを導入すべきだ。著者が調べた限りでは、LCCでマイレージサービスを実施している企業はないと思われる。確かにコスト的には割高になるかもしれないが、通常の10%程度のマイルを賦与することで、顧客の囲い込みにもつながるのではないか。日本ではクレジットカードでマイルを貯めている人も多いし、何より親会社との相乗効果を図るにも持ってこいだ。費用対効果がどれほどかはわからないが、せっかくのマイルという資産を生かさない手はない。





今回の記事に関しては、まったく自分の中に予備知識もなく、且つ充分にリサーチする時間もなかったため、論理性が低い記事になってしまったかもしれない。これを期に今後の日系LCCの動向にも目を向け、知見がたまったところで続編を書きたいと思う。

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